受診される患者さんからよく「お酒はどのくらい飲んでもよいですか?」と聞かれることがあります。
結論から言うと、答えは『ゼロ』です。
昔からよく、「少量の飲酒はカラダにいい」ということが言われますね。この話は、元々、フランス人はバターなどの脂肪分を多く摂取し、喫煙率も高いのに、他の国より心筋梗塞の死亡者が少ないため、これはワインの摂取量が多いからと考えられるようになりました。実際にアルコールは少量であれば動脈硬化性疾患の死亡率を減らす可能性があるといくつかの論文で報告されており、これがアルコールは少量であればカラダに良いと言われる様になりました。
しかし、2018年8月にある論文がイギリスの権威ある医学雑誌『The Lancet』に掲載されました。
その結果、確かに心筋梗塞に限っては、1日の飲酒量が男性:0.83杯、女性:0.92杯で発症リスクが最小になるとの結果でした。
しかし、飲酒によって乳がんや口腔がんといった他の病気にかかる可能性が高くなってしまうため、アルコールによる特定の病気の予防効果は、がんの発症リスクがあるため相殺され、結論として、健康への悪影響を最小化する飲酒量は『ゼロ』と結論づけられました。
以上より、医療面から見るとアルコール摂取はできる限り飲まない方がよいと考えますが、もちろん、アルコールを摂取することで生活の質が高くなり、より豊かな人生が送られるということも否定はできません(私もお酒は大好きです)。
そのこともふまえ、飲酒はできるだけ少なめに、時々楽しむ程度がベストであろうと自分にも言い聞かせ、患者さんにも説明しています。
これから暑くなり、ビールがおいしい季節になります。節度をもって、カラダのことを考えながら楽しみましょう。